どうもワタシデス。
もはや既に週刊ブログと化しておりますが、なんとか週一回は更新を保ちたい。頑張れ自分。
ここ1週間のニュースと言えば、日本ではサンシャイン水族館が大水槽で1300匹近いお魚さんを一夜にして失ってしまったというお話が世間を騒がせましたが、残念です。
水槽ってのは人工的にエコシステムを管理・凝縮した地球ですからね、ちょっとしたシステムエラーやヒューマンエラーが早急且つ壮大なバタフライ効果を引き起こして大絶滅を招いてしまいますなぁ。分かっていても、気を付けていてもミスは起きます。ミスで命が失われる世界ってのは色々とツライですね。
で、全く関係ないお話。
ハトです。
動物病院で働いていると避けて通れないのが野生動物の担ぎ込みです。
ここオーストラリアは世界でも有数の野生動物の宝庫なのは今更いうこともないでしょうが、これはつまりもう日常的に野生動物と接する機会というものがありまして、特に鳥ともなると人間生活圏内にも溢れているわけです。
で、やれ猫に襲われただ、やれ車や窓にぶつかっただ、ほぼ毎日何かしらの鳥が助けられて病院を訪れます。
多くは実際に怪我をしており、特に骨折が圧倒的多数を占めるのでこれはもう残念ながら現実的判断で安楽死にせざるを得ません。鳥の骨折治療は数週間ラッピングをして飛べなくした上、小さなケージの中での生活を強いることになりますが、野鳥の場合は相当の恐怖を与えてしまいますし、復帰後も筋力リハビリ等必要になることを考慮すれば非現実的なのです。お金もないのよ。
で、もう一つ圧倒的に多い病院訪問が「ヒナ鳥を拾った」という人達。
巣から落ちた雛ならまだ分かるんだけどね、時々持ってこられるのが飛行訓練中の若鳥達。一般人から見たら「飛べない可哀相な雛鳥」なんだけど、多くの場合は巣立ち後まもない、親鳥に見守られながらの飛行訓練途中、遠くで見守る親鳥の気持ちなんざいざ知らず「善良な市民」に「誘拐」されてきてしまった子たち。
割と図体デカいけど飛ぶのが下手な「若鳥」がいたら、ちょっかい出さずにそっと遠目から見守ってやってください。近くに親鳥がしっかりいてくれてます。
誘拐、ダメ、絶対。
で、こういったさらわれてきただけの健康的な野生動物はどうするかというと、豪州においては野生動物の世話をして、準備が出来たら野生に還すボランティアグループが複数存在しており(Wildlife Rescueと呼称されます)、獣医師の健康診断後に彼らに連絡してケアを任せます。我々は診断や治療を提供、彼らは世話の時間と餌代を自らのポケットマネーから出して動物の世話をしているわけです。
で、ここでブログタイトル。
Wildlife Rescueの管轄は「野生動物」ですが、ハトは野生動物じゃないのですよ(一部豪州原産の地鳩を除く)。渡り鳥というカテゴリに収まってしまいます。要は豪州原産の鳥ってわけではないよね、他の国から来た感じのアレだよね、ということです。
珍しくも何ともない鳥ですし、場合によってはフン害等もある「害獣」扱いまでされかねないこいつらはWildlife Rescueは受け取れません。限られた時間とスペースとお金を使うべきは鳩以外に沢山いるのです。
ということでハトは残念ながら基本的に安楽死。
でも健康で若い個体をエゴで淘汰するのは忍びないのも人情、自分は1匹限定で持ち帰り自分で面倒見る派でございます。
全ては持ち帰りません。あくまでも「家に一匹世話するスペースがある場合」に限ります。この国、野生動物多すぎるんで完璧主義では動物保護は成り立ちません。「Progression not Perfection」――完璧ではなく進歩、が現状の自分の信念。野生に生まれた動物は常に運によって生死が左右されていますんで、運良く自分の世話スペースが空いていれば助かるかもしれないし、空いていなければ運悪く安楽死です。運による命の選択、という考え方を採用しています。
上のハトさんがまさにそれ。病院に連れ込まれた当初は地面から垂直に30cm程度飛べるだけの、明らかな飛行訓練中の健康個体。嗉嚢(そのう)にはたっぷりとエサが入った状態で来ました。
ここまで健康体であれば最低限のサポートだけです。野生動物として数えられていなくても、野生動物として扱います。基本は自力で生きて行ってもらうために、昼間は庭に放置して羽ばたきの練習と筋力増強、夕方に回収して給餌、夜は安全のために鳥小屋に入ってもらうだけ。
日に日に力強くなっていき、飛行高度も距離もジワジワと上がっていきます。誰に教えられるでもなく成長していきますなぁ。時折近隣のハトも様子を見に来てくれ、何なら餌の取り方程度は教えていた模様。中々神秘的です。
一度、塀を越えて隣りの家の庭に入っちゃったときにはイヌに襲われかけ危なかったんですけどね、危険回避能力も覚えないといけないスキルなのでね…。人間が教えてあげられることには限度がありますんで、自分で覚えてもらうほかないでしょう。
イヌに襲われかけて必死に逃げた結果、どこか明後日に飛んでいって一回行方不明になったんですけど、夜中になって数時間後にウチの玄関前に震えながら座ってました。帰巣本能働いたんでしょうかね。
その後は木の上まで飛べるようになり、夜中になっても木から降りてこなくなったので放置していたら次の日には消えてました。きっと彼の眼には朝日に照らされた壮大な地球が映り、次の一歩を踏み出す気力となったと信じましょう。
自然は危険がいっぱいで運にだって生死を左右される世界ですが、その代わりに彼らには地球全土を家と名乗れる自由があるのだ。