とある獣医の豪州生活Ⅱ

豪州に暮らす獣医師のちょっと非日常を超不定期に綴るブログ

とある獣医の豪州生活Ⅱ

サンシャインコーストは今日も雨(2024年キャンプ2日目)

母さん、僕は今サンシャインコーストにいます。

サンシャインコーストは、今日も雨です。

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朝の7時。南を向くリビングには向かい側のハイライズに反射した朝日が勢いよく照射を開始し、展開してあった寝袋の顔部分にダイレクトアタックをかけてきた。

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死角からの朝日に目をやられていると今度は空から聴覚を狙った刺客も来訪。けたたましい声で捲し立てるゴシキセイガイインコ達である。野生個体だがよく人間から餌を貰っているのであろう、昨晩の残りのスープを朝飯がてら食べていた私の肩に我が物顔で乗ってきては飯の催促である。いやこれはお前ら用の蜜ではなくてただのジャガイモのスープなのだよ。

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ゴールドコーストのズレたあるあるを一通り楽しんだところで行動開始。まずは昨日コアラを観察したCoombabahへの再訪から。

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昨日あれだけ簡単にコアラが見つかったのだから今朝も大量であろうと思っていたのだが、どういうわけかこの日の朝は全く見つからず。時間帯によって行動が変わるような動物でもなかろうに...どうせ基本寝てるじゃないか。どうしてこうなった。

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粘って四方を探したがカンガルーしかいないので撤退。本日は北に150kmほど移動してサンシャインコーストを目指すが、その前にやっておかねばならないことがある。それすなわち、オーストラリアではこの近辺にしか存在しないレアなハンバーガーショップモスバーガーに行くことである。

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とてもおいしいエビカツバーガーを堪能したところで、いよいよサンシャインコーストへ。道中ブリスベンでの渋滞に捕まっていると、何やら空模様が怪しくなってきた。今朝の快晴が嘘かのように、本日午後の予報は雨である。

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小雨と本部とも言えない。中途半端な雨の中サンシャインコーストの友人宅に到着。一体ウォンバットを研究している誰なんだ...?本来であれば午後の時間を使って近場の熱帯雨林を散策する予定ではあったが、果たしてこの雨である。我々は雨雲レーダーに小さな穴があるのを見つけ、この木を逃さんとばかりに足早に森へと向かっていた。

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Mary Cairncross Scenic Reserveに到着するも、やはりそこは現実的に雨である。濃霧のかかる熱帯雨林は大変美しかったが、対象的に動物の影は薄く、何故か雨を全く気にしないパディメロンたちが数匹歩いているだけにとどまった。

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熱帯雨林マイナスイオン()と足元に吸い付いた数匹のヒルを充分に堪能したところで、帰宅を決意。K君の家へ帰る。インドカレーのテンションになったので具材を購入し、自宅飯の流れとなった。大変美味である。こういうのが気楽で良い。

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「明日の予定は?」

K君が問う。

「明日の天気次第だなぁ。晴れるなら予定通りBunya mountain np辺りに行くとして、雨が降ってたら雨雲を突っ切る形で朝から内陸方向に突撃かなぁ」

アドリブ旅の強みであり弊害でもある曖昧な答えを返す。

「どれくらいの確率?」

「えー現状は7:3で突っ走りコースじゃないかぁ?気象レーダーこんなだもの」

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天気ばかりはどうしようもない。期待と不安に胸とエアマットを膨らませつつこの日は平たい床にエアマット、電気と天井付きの豪華ゲストルームで就寝である。

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コアラは木に引っかかっていた (2024年キャンプ1日目)

ユーカリの揺籠に包まれて、彼らはひたすらに夢をみていた。

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2023年の後半は新しい家探しに追われ、引っ越しに追われ、新居での新生活の基盤作りに追われる日々が続いていた。明くる2024年は3月に日本に一時帰国をして日本食を楽しんだ。そんな生活を送っていたものだから私の中の何か、つまりはゴーストが囁くのである。

 

「そろそろテント生活をしよう。内陸に行こう。」

 

かくして1ヶ月前に4週間近く有給を取っていた私は何を恥じるでもなく堂々と翌4月の終わりにまるっと1週間の休みを半ば強引に取得して、全10日の休みを手にしたのである。

さてどこに行こうか。時期的には冬が始まる前で爬虫類も鳥類も動きが活発であろうから、やはり内陸を目指したい。しかしこの時期はNSW州ではスクールホリデーである。できるだけヒトのいない場所に行きたいのでここはQLD州まで行ってしまおうか。ともすればゴールドコーストにいる母親に挨拶もして、そのついでにサンシャインコーストにいる友人にも会っておくか。

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そんなアホなほど適当な計画を全部打ち込んでみると、周囲3500kmほどのバミューダトライアングルが地図上に完成した。よし、これだ。

そんなこんなで唐突な旅が始まったのが2024年4月19日である。何しろ唐突に休みを押し通したので今回はT君も誰も拉致できない一人旅になってしまった。それもそれで自由で良いであろう。

 

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初日はまだ真っ暗な朝4時からスタート。まずはシドニーから一気にQLD州のゴールドコーストまで車で突き走ります。沿岸部の1号線を使ったルートで、これといって個人的に楽しめる場所は道中にはないのでひたすら距離を稼ごう。

 

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市街部は朝になると渋滞を起こすが、日が出る頃にはシドニー周辺から離れることに成功。これで一気に効率がよくなる。

 

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朝マックと給油、それに加えて合計3回の小休止を挟みながらひたすらに1号線を突っ走ります。4:15スタートで、850kmを走り終える頃には時間が13:30過ぎ。市内も含めておおよそ時速100kmを維持できました。よしよし。

 

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なぜわざわざ早朝4時からスタートしたか。それは余裕を持ってゴールドコーストに到着し午後にフィールドへ繰り出すための時間を確保するためである。というわけで初日の今日はCoombabah Lake Conservation Parkへと突撃。

 

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 狙うはオーストラリアの人気者代表、野生のコアラ。ここには150頭ほどが高密度で生息するので歩いて散策しているだけで見つかるアツい場所らしい。

 

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と、エリアに入って歩き始めて5分のところで樹上高くに早速第一コアラを発見。本当にあっさり出現するなぁ。

 

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そこから10分ほど歩くと更に1匹。こちらは表情豊かに爆睡中。コアラは全体的な個体数は減っているが残っているところには高密度で残っているイメージなので、まさしくここは典型といった感じである。主に人間の開発によって生息域が分断縮小されていっているので、残された生息地で密度だけが濃縮されているのであろう。遺伝子プール的にもよろしくない状況だ。

 

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番奥にいた3匹目。こいつは地上からそこまで離れていない細い低木に引っかかるような形で爆睡していた。見た目は完全に酔っ払って行き倒れたオッサンである。腹の中で解毒に集中しているという面では確かに酩酊状態のオッサンとさほど生態は変わらないのかもしれない。

 

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ブッチャーバードはその様子をせせら笑い、

 

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乳離れしたくない子カンガルーは母親の乳首を求め続けていた。ここは平和で良いところである。

 

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およそ内陸キャンプ旅とは似つかわしくない夜景に囲まれつつ、初日は母の家のリビングにコットと寝袋を広げて煌々と照らす電球の下でブログを書きつつ熱いシャワーを浴びた。

 

 

 

 

オカメは曇天に謳う【内陸キャンプ旅4日目】

轟く雷鳴へ吠え返せ。

内陸のオカメインコ

猛々しく謳った。

 

朝の6時頃に起床。この日の夜は冷え込みも感じられない快適な夜であった。

テントから這い出て、低木の隙間から一切の恥じらいを感じさせない朝日を迎える。

 

朝日が昇る。気温が上がる。野営人が起きる。

朝日が昇り辺りを日差しが照らし始めると、一気に大量のハエたちが活動を開始した。内陸に来ていることを実感する瞬間である。彼らがどこで湧きどこに向かうのかは分からないが、とにかくオーストラリアの内陸を実感するのはこのハエの量だ。

朝日が昇る。気温が上がる。ハエたちがアップを始める。

T君の背中もハエに染まっていく、そんな朝。

ハエ部隊の猛攻が続く中、朝露に濡れたテントを乾かし、神風特攻を仕掛けてくるハエの混じっているであろう朝食のスープを飲み干した我々は、早々に撤退準備を整えて本日の目的地であるカナマラ(Cunnamulla)に向け進路を更に南へと取った。

野生動物が出るような場所ではなかったが、平和な野営地であった。

車を走らせ始めて1時間も経たないうちに、いきなり車を掠めるような近距離に鳥の群れが飛び出してくる。

「おぉぉぉおお、おかめ!おかめ!」

驚きつつも冷静にその姿を捉えるT君。すぐに減速、路肩に車を停める。

空に舞うオカメインコ達。長い尾羽が遠目にも分かりやすい。

セキセイインコと同じく内陸へ来たことを感じさせてくれる存在だ。飼育環境下にいるあのパニックを起こすような繊細さはどこから来ているのであろうか。野生環境における彼らはひたすらに図太さしか感じさせない。

ただの道端にオカメインコは群れている。

ヒョイヒョイ言いながら飛び回るオカメ達を追いかけてみると近くのブッシュに降りたため身を屈めて近寄る我々。

オカメインコの成る木。朝の羽繕いタイム。

順光まで回り込む。

たっぷりと1時間ほどオカメインコを堪能してから再出発。突発的な出会いこそ車旅の醍醐味である。いつも思うことだが旅とはスケジュールを詰め込んではいけないと思う。何時までに何処に行って何をする!という行程に固められていてはアドリブが効かない。スケジュールってものに追われるのは仕事や他人を巻き込んでいるときだけで良いのだ。

旅は自由であるべきだ。

放牧中のウシ達が道を塞ぐ。徐行。

昼頃に中継地点であるチャールビル(Charleville)の町に到着。給油をして、ついでにガソリンスタンドに併設している軽食屋にてハンバーガーを注文。ガソリンの会計もキッチンも全てが一人の兄ちゃんで回されているワンオペガソリンスタンド兼コンビニ兼軽食屋。これもまた内陸あるあるなのだ。

魅惑のメニューが並ぶ。内陸バーガーの雑さ加減が好き。

特に魅力的な公園なども辺りに見当たらなかったのでそのままガソリンスタンドの駐車場の車内で飯。レタス多めのバーガー、肉も焼きたてで大変美味であった。キャンプ勢の我々は慢性的に野菜不足になってしまう。

内陸の雑な店で買えるバーガーを総じて内陸バーガーと我々は呼ぶ。

給油もしたので安心して再び南下を続ける。路肩には時折多量の雨水が溜まっている状態。やはりここら一体もよく雨が降っていたようだ。

当初の予定としては主要目的地の一つである「シャーロットプレインズ」を目指したいところではあるが、どうやらこの場所に繋がるダートロードは完全に水没、ないしは泥化しておりトラクターでもないと通れない惨状であることが運営側からのSNS更新で明らかになっていた。

青々とした内陸の大地。遠くの豪雨が目視できる。

折角の機会ではあったが、行けないものは仕方がないため、ここでもアドリブの旅という面を活かし、目的地を近隣の探鳥スポットに変更。カナマラ(Cunnamulla)の町を経由し、T君のリサーチによって目星をつけた場所へと向かってみるが…

奥のほうまで完全に冠水していた。

道中、冠水に直面。

「これくらいなら行けるとは思うけどなァ」

「もう夕方だし突撃して詰んだらマジで終わる」

時間的なリスク回避も含め、ここは手前の町であるカナマラに帰投することに決定。

 

Cunnamullaの町の有料キャラバンパークに設営。

当初の予定から二転三転した結果、宿泊先が完全に無くなったので町外れにあったキャラバンパーク内に設営。有料のサイトではあるが、シャワーがあるのは有難い。テントを張り終わるころには辺りには曇天が広がり、ポールが軋む程度には風が強くなってきた。嵐の予感。

もう直に夕立が来る。

キャンプは手段であって目的ではない旅である。そこにはキャンピングカーも無ければタープすらもない、荷物の軽量化と撤退速度に重きをおいた装備の我々に雨をしのぐ手段は無い。周りのキャンピングカーに乗った連中を尻目に、誰も使う様子が無いトイレ横の共通スペースの屋根の下へ、そそくさと調理器具を持ち込み避難を決め込んだ。

雨になると飯を炊く気力も失う。今日はカップ飯である。

遠くに聞こえる雷鳴と屋根を叩く雨粒に怯えつつ、明日の天気が回復することをただただ祈り続けるしかない哀れで弱々しい人間を、蛍光灯の周りの羽虫たちはせせら笑っていた。

 

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