とある獣医の豪州生活Ⅱ

豪州に暮らす獣医師のちょっと非日常を超不定期に綴るブログ

とある獣医の豪州生活Ⅱ

地の果てへ征く(2024年キャンプ6日目)

地平線まで砂を蹴って征く。

f:id:happyguppyaki:20240426103033j:image

 

朝5:50起床。本日は小高い丘から日の出を見つつ、早朝の鳥たちを狙いに行きます。

f:id:happyguppyaki:20240424195638j:image

 

暗い町を進み、町外れにある丘へ。ハエの量が多いのは内陸あるある。地平線の向こうから顔を覗かせた太陽に挨拶してから丘を降りる。

f:id:happyguppyaki:20240424195810j:image

 

本来であれば丘の麓の水場に朝の給水に鳥達が集まるであろうと読んでいたのだが、いやはや来ない。期待外れの静かさである。どうしようもないので朝の鳥見を諦めて移動を開始。うーん、昨日はこの辺にセキセイインコいっぱいいたんだけどなぁ。。。

f:id:happyguppyaki:20240424200034j:image

 

本日はQuilpieから南下してEuloとCunnamullaの中間地点に位置する野営地・鳥見スポットを目指します。ちょっと寄り道を加えて350kmくらいの移動。

f:id:happyguppyaki:20240424200300j:image

 

道中はキンカチョウ、フトアゴヒゲトカゲ、サンドモニターに遭遇。オカメインコもいたけど遠すぎて撮影できず。

f:id:happyguppyaki:20240424200416j:image

 

あと上空をひたすら10-20羽の小さな群れでセキセイインコが忙しなく北上する姿を道中30-60秒ごとに目撃。君たちもっとどこか木陰に降りてくれ、写真撮るから...。

f:id:happyguppyaki:20240424200543j:image

 

2時間ほど走ったところで本日の寄り道の場所へ到着。Lake Bindegolly National Park。一応鳥見ができる国立公園らしいが詳細は一切不明。偵察に行くぜ。

f:id:happyguppyaki:20240426101156j:image

 

トレッキングコースの立て看板を見ると周回9.2kmとのこと。おぉ、時間はあるから構わんけどこの環境で3時間コースはちゃんと準備せねば...

f:id:happyguppyaki:20240426101242j:image

 

帽子にフェイスカバーに長袖と、日差し&ハエ対策万全で突っ込みましょう。塩分の摂れる軽食と水も持ちます。

f:id:happyguppyaki:20240426101559j:image

 

ひたすら炎天下の地平線まで歩かされる。なんだここは...。多分雨が降ると一部が湖になる環境なんだろうけど、ひたすらに乾燥してる。

f:id:happyguppyaki:20240426101631j:image

 

バードウォッチング用の場所、まで来ても結局水場は無い。うん、若干雨降った後なら凄く良い環境なんだろうな。だから事前情報も古い記録だったのね。

f:id:happyguppyaki:20240426101704j:image

 

White-winged fairywrenさんはこの乾燥限界地でも元気に跳ね回っていた。元気過ぎてピント合わねぇって。

f:id:happyguppyaki:20240426101839j:imagef:id:happyguppyaki:20240426101921j:image
f:id:happyguppyaki:20240426101917j:image

 

頑張ってみたけど暑いしハエ凄いしで断念。

f:id:happyguppyaki:20240426101901j:image

 

ブッシュウォークというよりは砂漠地帯の従軍訓練に近い何かを終えて、本日の野営地点へ。

f:id:happyguppyaki:20240426102002j:image

 

Euloの町を越えて着いたのは、前回も来た場所。22年の10月に来たときはとにかく鳥の濃い良い環境だったので期待。ここをキャンプ地とする。

f:id:happyguppyaki:20240426102026j:image

 

が、あまり鳥の声がしない。これは夕方だから...?それとも天候や気候の影響でみんなどこか違うところに散ってしまった...?いずれにしろ朝まで待ってみましょう。狙うはBourke’s parrot、アキクサインコです。ペットとして人気だけど野生環境で見つけるのは分布も狭くて結構大変なのよな。

f:id:happyguppyaki:20240426102123j:image

 

テントを設営して夕飯を作っていると隣にモモイロインコの木が出来上がっていた。君たちも今夜はここか。

f:id:happyguppyaki:20240426102142j:image

 

木の隣にある水桶(多分元は家畜用)でワチャワチャとしている様子を肴にメシを食い、この日は早めの就寝。

f:id:happyguppyaki:20240426102200j:image

 

 

伝説の地「エロマンガ」博物館へ(2024年キャンプ5日目)

男の子の夢が溢れる町、エロマンガ

f:id:happyguppyaki:20240424175415j:image

 

5日目朝は6:40に起床。前日が車中泊であったためテントで寝る夜は非常に快適であった。

f:id:happyguppyaki:20240424164419j:image

 

特に寒くもないが前日の焚火を復活させて朝ののんびりタイム。川のほとりに陣取っているので朝活発になり給水に来る鳥や動物の姿を期待していたがビックリするほど何も来ない。たまに上空にセキセイインコの声がする程度で終わった。

f:id:happyguppyaki:20240424164507j:image

 

こうなると長居していても何もないので7:40には撤退準備を完了して再び道路へ。本日目指す場所はこの旅の折り返し地点である伝説の町(当社比)Eromangaである。別に卑猥な意味はない。歴とした町の名前であり、ここいら一帯の地層をEromanga Basinと呼ぶのだから仕方ない。

f:id:happyguppyaki:20240424164544j:image

 

エロマンガへの道のりは長い。全て舗装路なのが救いだが、ブリスベンから直通で1100kmほどある。因みにオーストラリアで一番海から離れている町なのだそうな。

f:id:happyguppyaki:20240424164645j:image

 

道中でオカメインコの群れが飛び出してきたので停車。地面に降りて草の種を採食中。相変わらず特有のヒョイヒョイ声が愛らしい。逞しくもこの赤い内陸の地で元気に暮らしている。

f:id:happyguppyaki:20240424165026j:image

 

更に道中、今度は第一フトアゴさんにも遭遇。道に転がっているところを避けて停車し撮影。近づく前に逃げてしまったが逃げるなら車で真横を通り過ぎる前くらいには逃げて欲しいものである。

f:id:happyguppyaki:20240424165808j:image

 

どんどん進む。エロマンガまで残り69kmの標識が現れた。特に他意はない。69でエロマンガである。

f:id:happyguppyaki:20240424165829j:image

 

環境はひたすら内陸。カンガルーを避け、エミューを避けて時速100kmで進んでいく。

f:id:happyguppyaki:20240424165845j:image

 

オカメインコやトカゲやエミューを撮影しながら走り続けること3時間、ついにエロマンガの町に到着。

f:id:happyguppyaki:20240424174155j:image

 

とりあえず町はすっ飛ばしてそのままエロマンガ自然歴史博物館(Eromanga Natural History Museum)へと直行。町から少し外れた荒野にあるらしい。

そう、エロマンガといえば男の子のロマン。エロマンガといえば恐竜です。

f:id:happyguppyaki:20240424170055j:image

 

駐車場に到着。10:50というなかなか混雑しそうな時間に来てしまった。車が3台も停まっていやがるぜ。この膨大な駐車スペースを使う時は果たして来るのであろうか。まぁ土地は有り余ってるし良いのか。

f:id:happyguppyaki:20240424170253j:image

 

周りの田舎的雰囲気からは異質な香りがプンプンと際立つ超近代的な博物館の外観。それもそのはず、建設開始2019年でコロナを喰らいつつの開館2022年だからね、超新しい観光スポットなのである。

f:id:happyguppyaki:20240424170402j:image

 

博物館内に入るとこれまた近代的でオシャレな受付。後ろにはセキセイインコの剥製が群れを成しているのがとても内陸感あって良きです。

全く事前情報無しで訪れてしまったけど、どうやらこの博物館はツアーガイド式で、ツアー時間は9時、11時、13時、15時に分かれている模様。到着時間10:57。完璧すぎるタイミングで着いた。

 

入場料35ドル。嬉々としてお支払いしますとも。田舎の産業に課金は大事だし、考古学者の助けに少しでもなるなら幸いです。

f:id:happyguppyaki:20240424170522j:image

 

陽気なツアーガイドの兄ちゃんに連れられてまずは視聴覚室で20分ほどのイントロムービー。ここは著作権とかで撮影禁止。内容はビッグバンから地球誕生、そして現代に至るまでの生命体の進化と絶滅の歴史。それぞれの時代の時間の長さを「ブリスベンからエロマンガ博物館までの陸路」で可視化しているのがユニーク。そうだね、ブリスベンからエロマンガの町までが1100kmだとしたら、生命の誕生は町から博物館駐車場だものね。

f:id:happyguppyaki:20240424170919j:image

 

そしてガイドの兄ちゃんに連れられて化石の保管室へ。エロマンガ博物館は地理的に2つ、主軸となる恐竜の化石が展示・保管・研究されています。

1つは近隣であるEulo周辺で発掘されているディプロトドン(Diprotodon)。体長3.4mほどのウォンバットの形をした、世界最大の有袋類の化石です。近場で発掘されるのでここに補完され研究されています。

そしてもう一つが愛称クーパーで親しまれている、Australotitan cooperensis。体長30mの、現在世界三位の巨体を誇る大型恐竜。エロマンガ地区で発掘された、この地域の主人公。

f:id:happyguppyaki:20240424172740j:image

 

館内にはクーパーの左前脚と左後脚の3Dプリント模型がデカデカと立ち、周りにはガチで発掘してきたけどまだ手が回っていない化石サンプルで埋め尽くされている状態。これはアツい。

「多分あと100年分の仕事量を超えるサンプルが保管されてる。世界恐慌が来ても仕事はあるぜ!」とは陽気なガイドの兄ちゃん。不景気が来たら真っ先に予算削られてしまうのではないかと冷静にツッコミはしない。本人は楽しそうである。

f:id:happyguppyaki:20240426200912j:image

 

こっちは本物のクーパーの骨。ちゃんと温度管理もしっかりしてます。しかし発掘以前のダメージは大きい。クーパーはエロマンガ地区にある牧場の私有地から出土しました。そのきっかけを作ったのは2004年に牧場の14歳の息子が牧場内をバイクで走ってたら「見慣れない石」を見つけ、これを拾ったことが始まり。この石をたまたま親がブリスベンの博物館に何気なしに送ってみたところ古代地質で小さな化石が沢山含まれていたのだ。

 

つまりは厨二病が大きな発見へと導いたのである。Euloからディプロトドンが出土したきっかけも別の14歳だったはずなので、やはり厨二病と男子の変なモノ集める癖ってのは大事なのだ。

f:id:happyguppyaki:20240424173414j:image

 

たっぷりと博物館を堪能して、お土産のマグネットにも課金してホクホクである。

f:id:happyguppyaki:20240424174120j:image

 

しかしエロマンガの凄いところはこれだけじゃない。事前情報によるとここには公衆トイレに無料シャワーが備え付けてあって、お湯も出るというではないか!

f:id:happyguppyaki:20240424174300j:image

 

野営民としては無料シャワーはありがたいので早速使わせていただく。掃除も行き届いておりお湯も安定供給される!すごい!ありがたい!エロマンガシャワーだいしゅき!

f:id:happyguppyaki:20240424174438j:image

 

シャワーのお礼にもうちょっとこの町に課金したくなったので、近くにあった「エロマンガカフェ」へ。 歴としたカフェです他意はない。因みにここはエロマンガキャラバンパーク、エロマンガモーテル、そしてエロマンガ郵便局も兼任している。

f:id:happyguppyaki:20240424174657j:image

 

「こんちゃっす!昼飯食えます?」

「いらっしゃい!バンズが切れてるからサンドイッチになっちゃうけど良いならね!」

「構わんですよー、オススメとかあります?エロマンガサンドイッチみたいな?」

「私が作るんだもの全部最高の絶品よ!」

「それもそうだな!じゃあフィッシュバーガーで!」

田舎のおばちゃんのノリである。ワイ氏の中でエロマンガ株は鰻登りだ。

f:id:happyguppyaki:20240424174923j:image

 

作りたてほやほやのフィッシュバーガー改めサンドイッチをその場でいただく。内陸の醍醐味である、美味しい。エロマンガ最高。エロマンガ万歳。

f:id:happyguppyaki:20240424175058j:image

 

そうこうしている間にに時間はどんどん過ぎていき、帰り支度となった。エロマンガでやりたいことはやったので、来た道を戻りこの日はQuilpieで一泊。

f:id:happyguppyaki:20240424175320j:image

 

 

 

星に溺れて(2024年キャンプ4日目)

孤独で深い夜を、

南十字星は静かに照らす。

f:id:happyguppyaki:20240422205911j:image

 

4日目朝は午前6:30分の車中からスタート。田舎の朝は早く駐車場の隣で仕事を開始したトラクターの音で起床。どうしてもシートは硬いので寝心地は良いとは言えないが足と腰を伸ばして寝ていたため快眠であった。

f:id:happyguppyaki:20240422205321j:image

 

トイレで歯を磨き、朝食の代わりに残っていたお菓子を食べる。天気はすこぶる良さそうである。もう雨には苦労しなくてすみそうだ。遠くの電線でホオアオサメクサインコが歌う中、車のシートを元に戻して出発である。

f:id:happyguppyaki:20240422205519j:image

 

午前7時より西に向けて行動開始。Romaの町を出てすぐ、上空を4羽のオカメインコが飛んでいく姿を車中から確認。だいぶ内陸地点に入ってきていることを実感する。

f:id:happyguppyaki:20240422205738j:image

 

道中で第一エミュー達も発見。

f:id:happyguppyaki:20240422205820j:image

 

2時間ほど走ったところで一時休憩。地図上で気づいたTregole National Parkなる場所に寄り道。

f:id:happyguppyaki:20240423061129j:image

 

オーストラリアには至るところに国立公園が存在するが、およそ2種類に分けられると思っている。1つはその雄大な自然環境を活かして客を呼び込みお金を落とさせてしっかり管理維持しているタイプ、そしてもう一つが「なんか特殊環境だから開発防止で国有化だけしておこう」ってノリで国立公園の名前もらいつつも放置されているタイプ。

f:id:happyguppyaki:20240423061436j:image

 

ここはまぁ安定の後者ですね。荒れたりはしていないけど特に何をするでもなく放置されている静かな場所。人なんて誰も来ない。あと動物もあまりいない。

f:id:happyguppyaki:20240423062027j:image

 

休憩終了。さらに走ります。とはいってもまだ午前中。昨日距離を稼いでいたので今日の日程はとても緩く400km程度の道のりしかない。

f:id:happyguppyaki:20240423062253j:image

 

12時、Charlevilleの町に到着。本日の宿泊地を選定します。良い感じの場所が1時間ほどの場所にあることが判明したのでそこを目指してみることに決定。アドリブの旅です。

f:id:happyguppyaki:20240423062453j:image

 

有志たちの情報を頼りにちょっとしたオフロードを進んで本日の野営地点に到着。午後2時。ここをキャンプ地とする。

f:id:happyguppyaki:20240423062623j:image

 

まだまだ日差しが元気過ぎて何もやる気が起きないので、河辺の日陰に椅子を展開してひたすらのんびり。川を通って吹いてくる風が心地良い。だが動物はいない。

f:id:happyguppyaki:20240423062759j:image

 

午後6時、陽が落ちたところで設営&焚火の設置。今日は火が起こせると分かっていたのでCharlevilleで購入してきた鶏肉を炭火焼きにしていきます。

f:id:happyguppyaki:20240423062943j:image

 

カリカリの鶏を火から取り上げて口を半分火傷しながら食べる。人生が豊かになる瞬間だ。

f:id:happyguppyaki:20240423063055j:image

 

ふと空を見上げてみれば満天の星空に大きな月。後2日で満月という夜。ひたすらに明るい。

f:id:happyguppyaki:20240423063207j:image

 

夜に自分の影が見える。それが月光によるものだと確定的に分かる環境。周りには人も明かりも人工物も何もない。南十字星の左下にある石炭袋の暗さすらも際立つ、空に溺れそうな綺麗な夜であった。

f:id:happyguppyaki:20240423063453j:image